【自治体DX推進協議会2026年調査】生成AIを導入した自治体は78.2%、全庁活用は54.9%|庁内資料をもっと活かすAIの使い方とは

こんにちは、マーケティング部 AIマーケティング推進課の森山です。
皆さんの職場では、生成AIをどのくらい使えていますか?
「案内文の下書きを作る」「長い文章を要約する」「言葉の意味を調べる」といった使い方は、すでに身近になってきたのではないでしょうか。
一般社団法人自治体DX推進協議会が2026年に実施した調査では、回答した自治体の78.2%が、全庁活用・一部部署での活用・実証実験を含めて、生成AIの活用に着手していると回答しました。そのうち「全庁的に活用している」と回答した自治体は54.9%です。
参考:自治体DX推進協議会の調査結果
一方で、活用上の課題として最も多く挙げられたのは「職員のリテラシー(活用スキル)不足」で、82.7%でした。
AIを導入しても、「何に使えばよいのか分からない」「文章作成以外の使い道が思い浮かばない」と感じる方は少なくないのかもしれません。
今回は、役所の中にすでにある資料を、もっと活かしやすくするAIの使い方をご紹介したいと思います。
必要な資料はあるのに、探すだけで時間がかかる
たとえば、異動して間もない職員が、住民から次のような問い合わせを受けたとします。
「この申請には何が必要ですか?」
「過去に同じような相談には、どのように対応しましたか?」
「この制度の対象になる条件を確認したいです」
必要な情報は、庁内のどこかにあるはずです。
例規集、手引き、過去の議会答弁、事業計画、住民対応の記録、前任者が残した資料などです。しかし、資料の保存場所が分かれていたり、ファイル名が思い出せなかったりすると、探すだけで時間がかかってしまいます。
ここで、一般的な生成AIに質問しても、庁内にある例規集や過去の対応記録は参照されません。AIは一般的な説明を返してくれることはあっても、その自治体独自のルールや、これまでの対応方針までは答えられません。
もちろん、詳しい先輩職員に聞けば分かるかもしれません。しかし、住民対応や会議、ほかの業務で席を外していたら、すぐにつかまるとは限りません。
検索して候補のファイルを開き、内容を読み、必要な箇所を見つける。この作業を繰り返しているうちに、本来対応したかった業務の時間が減ってしまうこともあるのではないでしょうか。
異動がある職場では、前任者の知識や過去の経緯を把握するまでに時間がかかります。
自治体職員を対象とした調査でも、新しい部署に異動した職員の48.6%が「引き継ぎや業務の把握がスムーズに進まなかった」と回答しています。課題としては、「引き継ぎ資料やマニュアルの不足」が39.4%、「業務の属人化」が35.8%でした。
参考:rakumo「自治体職員の人事異動とDXに関する比較調査」
「必要な資料をすぐ確認できる仕組み」があれば、仕事はどう変わるか
では、必要な情報を探す時間を短くできたら、どうでしょうか。
たとえば、職員が質問を入力すると、AIがあらかじめ指定された例規集、手引き、過去の答弁などから関連する資料を探し、回答案と根拠となる資料を示してくれるとします。
「○○の申請要件を確認したい」と聞けば、関連する規程や手引きの候補が分かる。
「以前の議会では、この事業についてどのような答弁をしたか」と聞けば、過去の答弁を探しやすくなる。
「住民からよくある質問に、どう案内すればよいか」と聞けば、案内文やFAQのたたき台を作れる。
職員は、資料を一から探す時間を減らし、AIが示した根拠を確認した上で、判断や住民対応に集中しやすくなります。
異動してきたばかりの職員にとっても、「誰に聞けば分かるか」から始めるのではなく、まず必要な資料や過去の対応を確認できるようになります。
こうした仕組みがあれば、庁内に蓄積されてきた資料を、今より活かしやすくなりそうですよね。
AIが関連情報を探し、回答案を作る「RAG」という仕組み
このように、組織が持つ資料をもとにAIが関連情報を探し、回答案を作る仕組みを「RAG(ラグ)」と呼びます。
RAGは、AIに何でも自由に答えさせるための仕組みではありません。

あらかじめ利用を許可した資料を対象にして、質問に関連する情報を探し、その内容をもとに回答案を作ります。インターネット上の情報だけで回答する、組織内のルールや過去の記録に沿った内容を確認しやすいことが特徴です。
実際に山口県山陽小野田市では、自治体専用ネットワーク上で利用できる生成AI環境を整備し、市議会議事録や条例などの市独自情報を呼び出して、回答を生成できる仕組みを導入しているそうです。
参考:山陽小野田市「市の業務に生成AIの活用を開始しました」
このようにRAGは、次のような業務での活用が期待できます。
| 業務の場面 | RAGでできること |
|---|---|
| 住民から手続きについて質問を受けた | 情報検索・案内 申請要件、必要書類、担当窓口に関する資料を探し、案内のたたき台を作る |
| 新しい担当者が業務を引き継いだ | 引継ぎ支援 手引き、過去の対応、制度の概要をもとに、必要な情報を回答できる |
| 議会答弁や説明資料を準備する | 資料作成支援 過去の答弁、関連する計画、例規などを横断して探すことができる |
AIは、職員の代わりに最終判断をするものではない
ここで一つ、AIを使う上で注意することがあります。
AIはあくまで、業務を支援するアシスタントです。AIが示した回答が、常に正しいとは限りません。
例えば参照する資料が古い場合、制度改正が反映されていない場合、質問の意図をAIが正しく理解できていない場合もあります。住民ごとの個別事情や例外的な対応についても、AIだけで判断することはできません。
そのため、住民対応、議会答弁、公的な文書などにAIを使う際は、AIが示した回答や根拠資料を、職員が最後に必ず確認することが必要です。
RAGは、職員の判断を置き換える仕組みではありません。資料を探し、情報を整理し、回答案を作るまでの時間を短くする仕組みです。
最終確認と判断は職員が行うことで、正確性を保ちながら業務を進めやすくなります。
安心して使うために、最初に決めておきたいこと
官公庁でRAGを活用する場合は、便利さだけでなく、情報の扱い方を決めることも重要です。
まずは、公開済みの例規集や手引きなど、利用範囲を明確にできる資料から始めるのが良いかと思います。
内部資料を扱う場合は、誰がどの資料を見られるのかを部署や役職ごとに設定する必要があります。また、制度や資料が更新された際には、AIが参照する情報も更新する運用が欠かせません。
「AIに任せれば終わり」ではなく、参照する資料を管理し、利用範囲を設定し、職員が最終確認を行う。この3つを組み合わせることが、安心して活用するための基本です。
まとめ:庁内資料を、必要なときに使える知識へ
役所には、例規集、手引きなど、多くの情報が蓄積されています。
RAGを活用すると、こうした資料を「保管しておく情報」から、「必要なときに探して確認できる知識」へ変えていくことができます。
異動後の引き継ぎ、住民対応、議会答弁の準備など、日々の業務で資料を探す時間を減らし、職員が確認や判断に集中しやすくなることが期待できます。
ただし、AIは最終判断を行うものではありません。AIの回答をそのまま使うのではなく、根拠となる資料や最新の制度内容を、職員が必ず確認することが大切です。
「庁内にある資料を、もっと探しやすくできないか」「自分たちの業務で、どこからAIを活用できるか」と気になった方は、お気軽ご相談ください。

今回のコラムはここまで。また次回のコラムでお会いしましょう。